がやっとやっと書き終えたのでUPします。
【読む前にこれ読んでね】
この小説は続きものになってますので
【藤の花さくころ@,A】をお読みになってから
読むのをお勧めします。
この章はゲームの藤堂平助ルートが終わった時点からの話になってます。
少々グロテスクな表現が入っている部分があります。
ではお読みになるかたはこちらからどうぞ→
【藤の花咲くころB】
仙台を出発し京にある千姫の屋敷へ向かい歩き始めたが
3人共、思った以上に疲労を感じた。
千姫は羅刹の血を飲まされながら幽閉されていて体力はすっかりなかったし、
風間も君菊もまだ深い傷は癒えきっていなかった。
君菊の知り合いが水戸にいるというのでなんとかそこまで無事に辿りつくことができた。
「姫、こちらの御宅なら安心してしばらく休むことができそうです。
家主は同じ鬼族の仲間ですし。」
古そうだがかなり大きな屋敷で庭には色とりどりの花が咲き
隅々まで手が行き届いているかんじだった。
家主が家から出てきた。
「少しの間、こちらでお世話になってもいいでしょうか。」
君菊が家主と話をしている。
家主は50代ほどの品のよさそうな男性だった。
家主は快く迎えてくれた。
広い部屋に案内されると、3人はやっと休めたとばかりに
座り込んだ。
「水戸に君菊の知り合いがいたなんて知らなかったわ。」
「実は、京の島原で私を御贔屓していただいていた方なのです。」
「そうだったの。とにかく助かったわ。」
千姫はチラリと風間を見た。
部屋の奥の方ですでにぐっすりと寝ていた。
ここまでの道中、千姫と君菊から少し離れながらも
2人の身を守るようにいつも周りを警戒しながら歩いてくれた。
会話はほとんど無かったが体調が万全でない千姫と君菊にとっては
いてくれるだけで心強い存在だった。
風間千景は四六時中気を張っていたのだろう。
きっとここに来て、やっと安心して眠ることができたようだった。
「疲れたのね。」
千姫は風間を見て言った。
そして歩み寄り掛け布団をそっと掛けてあげた。
千姫も君菊もやっとゆっくり寝ることができた。
千姫は目を覚まし、ひどく汗をかいていた。
外はもう暗くなっていて虫の鳴き声が聞こえていた。
何か怖い夢でも見たのか覚えていないが
息も荒く手のひらには力を込めて握っていたのか爪の後がついていた。
ふと視線を感じて振り向くと
先に起きていた風間が千姫をじっとみていた。
「かなりうなされていたぞ。」
風間が低い声で言った。
「そ、そう・・・」
千姫の発作は今のところ起きていなかったが
あいかわらず顔色は悪くいつ発作が起きるかわからない状態だった。
しかし今、あの発作の前のいやな感覚に襲われていた。
手が震えだす。
千姫は自分の震える手を見つめると次に体がガクガクと震えだした。
「うっ・・・」
羅刹の血はいまだ千姫の中に巣食っていた。
血管の中を暴れるかのように体中に痛みが走る。
「ううう」
千姫は胸元を掻きむしるように伏せた。
「おい!」
風間が急いで駆け寄り千姫の肩を抱えた。
「だ・・いじょうぶ・・しばらくすれば・・・」
風間は山南と藤堂平助が戦っている時に羅刹になりかけた千姫が
急に元に戻った時のことを思い出した。
「あのとき、なぜ元に戻った?」
「・・・っ・・え?」
風間は思いついたように刀で自分の手のひらをスッと一筋切り込みを入れた。
とたんに切った部分から血が湧くように出てきた。
千姫のあごに手を添えると切った方の手を口元に持っていき
ギュッと握った。
風間の手から滴り落ちる血は千姫の口に注がれた。
「!」
ゴクリと千姫の喉が鳴った。
千姫のからだから徐々に強張りが解け、
ギラついた瞳は元に戻った。
千姫は風間の目をじっと見ながら息を整えた。
風間もその千姫の目を見ながら言った。
「やはり血には血か。」
「ええ。確かにあのとき、あなたの血が口に入った瞬間
元に戻ったわ。」
「俺の純血の鬼の血を飲んで汚れたものを浄化できるなら
それに越したことは無いのだが・・・」
千姫は急に悲しい気分になった。
「私の血には羅刹の血が混ざってしまったのね。
あなたの子を産むなんていう契約をしたけど
今の私ではそんな価値はないわね・・・」
そう言って悲しげな薄笑いを浮かべて風間を見た。
しばらく沈黙が続いた。
風間はため息をつくと
「無責任なことを言ってくれる。」
千姫はうつむいた。
いつもの凛とした態度はどうした。
俺に喝を浴びせるほどの勢いは・・・
しかし風間にも千姫の気持ちがよくわかった。
小さなころから鬼族の純血を引き継いでいく者として育てられてきた。
誇りを持って生きてきたはずなのに
まがい物の血を飲まされその誇りを挫かれたわけだ。
それはもう絶望に近い。
「おまえは俺の子を産むと言った。
たとえ今は羅刹の血が混ざっていようと
我ら純血の血がそれに汚されることは無い。」
千姫は目に涙をためながら風間を睨んだ。
そして声を押し殺したようにつぶやく。
「あなた、私を哀れんでるのね。
それって屈辱だわ・・・」
その態度を見て風間は少しだけホッとした。
「ふっ。
俺が人を哀れむ魂か。」
「・・・・・・・
そ、そうよね。
あんたはそういう人じゃない・・・か」
風間は千姫のあごに手を添えて顔を自分に向かせると
瞳の奥を覗き込むように言った。
「いいか?
おまえには俺の子を産んでもらう。
羅刹の血が抜けるまで何度でも俺の血を与えてやってもいい。
まがい物の血など浄化するまでだ。」
「・・・ええ。
これは・・・契約だものね・・・」
千姫の顔に涙の筋が幾重にも落ちる。
風間は(そうだ、契約だ)と言ってやろうと思っていたが
言葉は喉の奥で止まっていた。
その代わりに違う言葉を言いたかったが
それが何なのか自分でもわからなかった。
気がつけば千姫を抱きしめていた。
言葉にならない何かがそうさせた。
千姫は風間の胸の中で気が済むまで泣いた。
いつのまにか目を覚ましていた君菊は
ただだまってその光景を涙ぐみながら見守っていた。
翌朝、千姫は色とりどりの花が咲く庭を散策していた。
大きなユリの花の前で深呼吸をした。
「このユリの香りだったのね。」
そう独り言のようにつぶやくと
後ろから声がした。
「夏にさくヤマユリは香りが強い。」
振り向くと風間がいた。
「おはよう。
意外だわ。花に詳しいの?」
「その花はうちの庭にも咲いている。」
「そうなんだ。」
事実風間は花が好きだった。
しかしそう言うのは気恥かしかった。
「じゃ、この花はなんていうの?」
2人でそんな会話をしていると家主が庭の水撒きに出てきた。
そして2人の前で立ち止まると家主はニコニコしながら言った。
「うちの庭にこんな季節なのに藤の花が咲いたのかと思いましたよ。」
「え?」
意味がわからず千姫が首をかしげた。
「お二人のことですよ。
まるで藤の花が満開になっているかのような絵に見えました。」
千姫と風間はお互い目を合わせ不思議な顔をした。
「きっとお二人には藤の花がよく似合います。」
家主はそういうと水を撒き出した。
「藤の花か・・・」
そう言うと風間は千姫と目を合わせながらフッと笑った。
藤の花は数ある花の中でも風間が大好きな花の一つだった。
そんな花に2人が例えられるのはなんだか嬉しかった。
風間の頬笑みに千姫も二コリとした。
ほんの一瞬の小さな頬笑みだったのに
風間の胸は強く衝撃をうけたように熱くなった。
それはずっと前にも見た笑顔を思い起こさせた。
あのころ今一度会いたいと思い続けていた少女。
間違いない。
あの少女はこの千姫だ。
「おまえに、昔あったことがあるな。」
千姫はその言葉にすぐ反応した。
「やっと思い出しました?」
沈黙が流れた。
花香るおだやかな朝、
眩しくキラキラ光る日差しの中
2人は見つめあっていた。
契約などではない、
2人のそれぞれの心の中にずっと前から芽生えていた気持ち。
今それは目の前にいる相手を愛しく思う気持ちへと一気に変わった。
数日間で3人はすっかり体力を戻した。
千姫だけはたびたび起きる発作で苦しんだが
そのたびに風間の血を飲んだ。
3人は再び千姫の家のある京を目指して旅を始めた。
京へもあと少しとなった名古屋の宿で休んでいる時
風間がいない時を見計らい君菊は千姫に声をかけた。
「姫。」
「なあに?」
「姫がいつかお話になっていた初恋の少年とは
もしや風間千景でしたか?」
「ふふ、どうしてわかるの?」
「やっぱりそうなんですね。
姫はこれまで男性に御気を許すようなことがなかったので。
きっと初恋の思い出を大切にされているんだと思っていました。
その少年は鬼族ともおっしゃっていたし。」
「君菊は鋭いわね。」
「好きなんですね。風間千景のことが。」
「え、ええ?」
いきなりそんなことを言われるとは思わず千姫はびっくりした。
「最近の姫を見ていればわかります。」
君菊は二コリとした。
千姫は顔が赤くなった。
「ど、どうかしら。
あんな傲慢な態度の奴。」
そう言いながらも顔は赤く火照るばかりで両手で頬を隠した。
「姫。嬉しいんですよ。私は。
人のことばかり心配する貴女様なので
御自分のことを後回しにされてばかりでしたでしょ。
姫。
姫も幸せになってほしいのです。」
「君菊・・・」
「希少な鬼族が存続していく方法として
由緒ある純血の鬼同士が一緒になるという選択もありだと思うのです。
姫の血が風間家の世継ぎにつながっていくのであれば
御先祖も許されると思いますよ。」
「そうだといいわ。」
千姫は君菊の言葉に何か希望に満ちた気分になった。
京の千姫の屋敷にやっとついた。
夏は過ぎて秋の気配を感じるころだった。
風間はその屋敷の庭を懐かしく歩いた。
この庭だった。
あの少女とあったのは。
「ねえ、蹴鞠やらない?」
ハッとして振り向く。
千姫がクスクスと笑った。
風間は千姫を見下ろしながら言った。
「やってやってもいいぞ。」
千姫が大笑いした。
「それそれ、あなたそう言ったわ。」
風間は少し照れ臭くなって赤くなった。
千姫が笑いながら風間の手をつかみ走り出した。
「おい・・・」
あの時もこうやって突然手をとって走り出した。
風間は立ち止り繋がれた手を思いっきり引いて
千姫を抱き寄せた。
「きゃ・・・」
風間は千姫の髪をかきあげこめかみに顔を寄せた。
「ここに、怪我をさせた。」
「うん。あなたの蹴った毬がおもいっきりあたってね。」
「まだ謝っていない。」
「え?」
「あの時は・・・
悪かった。」
まさか風間があやまるなんて。思ってもみなかった。
千姫は風間の温もりとその言葉に力が抜けた。
風間もまたすんなりとそんな言葉が出た自分に驚いたが
ずっと言いたかったことが言えたことに満足だった。
お互いの胸にある想いは自然に2人の顔を寄せた。
そして迷いなく唇が重なりあった。
千姫を京まで送った後、風間は薩摩との残りの仕事をするため
京を後にした。
千姫は風間家へ入ることを血族達に話さなければならなかった。
君菊の後押しもあり時間はかかったが説得することができた。
千姫、風間それぞれの残した仕事を終えた年の5月。
風間家の庭は色とりどりの花が咲き香しい風がただよっていた。
そしてなんといっても、藤の花の見事なこと。
満開に咲いた藤は華やかで薄紫色の滝のように見えた。
風間は満足げにその光景を眺めていた。
いつだったか水戸で世話になった家主が
千姫と自分を見て『お二人が藤の花に見えた』と言ったのを思い出していた。
あの言葉は風間にとってなぜか忘れられなかった。
それだけ嬉しい言葉でもあったのだ。
自分達がこんなに見事な花に例えられるとは。
風間家の輝くこの庭は花達だけの輝きではなかった。
凛々しく立ち尽くす風間自信も眩しいほどだった。
それにさらに花を添えるかのように
白無垢姿の千姫が立っていた。
「お待たせしました?」
風間は振り向くと久しぶりの再会に胸が鳴った。
手を差し出しだまってうなずいた。
ゆっくりと風間に向かう。
千姫は藤の花の中に立つ風間が眩しかった。
怖いくらいの幸せ。
2人の手が繋がれた時
それはまるで絵巻の1枚のようだった。
契約でもなく、嘘いつわりのない愛。
それがますますこの光景を眩しくした。
藤の花咲くころ 完
****************************************
最後までお読みいただきありがとうございました。
千姫幸せになってよかったー(´;ェ;`)
ゲームだとなんかかわいそうな役だったからなぁ。
藤の花の花言葉は
『至福のとき、愛(恋)に酔う、歓迎、佳客、決して離れない』
なんかいいね(*´∇`*)

にほんブログ村
【関連する記事】
二人のその後がすっごい気になりましたっ(*^_^*)
珍しい組み合わせで書いて下さりありがとです★
千姫と風間…お似合いですよね\(◎o◎)/
よかったらまた番外編的なモノでその後の二人を書いて下さい(^_-)-☆
読んでいただきありがとうございます!^^
風間×千姫のお話って少ないですよね。
私は風間も千姫も好きなのですぐにこの組み合わせが思い浮かびました。
結構お似合いな2人ですよね^^
その後の2人のお話も何かピン!と思いついたら書いてみようと思います(^-^)