薄桜鬼の二次創作小説、風間×千姫の続きが書けましたのでUP。
ゲームの平助ルートにそってすすんでいるお話ですが
今回でゲームの終わった部分にやっと到達です。
【読む前にこれ読んでね】
薄桜鬼の平助ルートに沿ったお話ですが自分流に書いてしまっているので
多少話が違ったりする場面もあります。
千姫、風間の視点で書かれています。
続きものになってますので@をお読みになってからこの章を読むのをお勧めします。
注意!この章は少々グロティスクな表現が含まれていますので
15歳以下の方にはお勧めできません。
ではお読みになるかたはこちらからどうぞ→
風間千景×千姫
【藤の花咲くころA】
仙台城の最奥にある部屋。
一人でいるには広すぎる部屋で
千姫は体中に広がる痛みと息苦しさに身を丸めた。
あとどれだけこの苦しみに耐えられるだろうか。
朦朧とする意識の中幻のように君菊や千鶴が現れ
手を差し伸べる。
その手にすがりつきたいのにその幻は遠退いていく。
もう限界かもしれないと思う時
必ず現れるのは最後に見た風間千景の目。
言葉はなくとも、その目が何かを語る。
幼いころにも見たことがあった。
負けたりしない。羅刹の血になんか!
やっと発作が治まるが、起きあがることもできず
ただ床に伏せているしかなかった。
そんな日々が続き本当の限界がいつきてもおかしくない状態だった。
今日もまたあの足音が近づいてくる。
でもいつもとは違う、急ぎ足の足音。
襖を開く音がすると
千姫はまたこれから来る苦しみに構えるように身を屈めた。
「あなたは本当にしぶといですね。
予想外でしたよ。
あなたが羅刹になる前に余計な邪魔者が来てしまった。」
邪魔者?もしかしたら、君菊?
千姫は期待したが今の自分はとても危険な存在。
今会っては君菊に何をしてしまうか・・・
「さあ、奴らが来てしまう前に飲んでもらいましょう。」
千姫は逃げたくても抵抗する力さえもう無かった。
山南はまたいつものように口うつしで羅刹の血を飲ませる。
飲み込むまで決してその唇は離れてくれない。
全身に震えがおきる。
――苦しい・・・・
涙で滲む視界に何かを叫びながら部屋に入ってくる人影が見えた。
「おのれ!姫から離れろ!この下郎が!」
――君菊・・・・
ゴクリ。
また、飲んでしまった。羅刹の血・・・
千姫は咳き込んだ。そしてまたあの苦しみが襲ってくる。
「うぅっ!」
「奴らが来てしまいましたよ。まったく困った姫君だ。」
そう言うと山南は立ち上がりその人影の方へ向かっていく。
「き・・・きみ・・ぎく・・」
「姫!」
苦しみの中で数人の声が聞こえる。
千鶴と藤堂平助、そして・・・風間?
苦しさにたえながらなんとか目を凝らして人影を確かめる。
見たことのない服装をしていたが確かに風間千景がこの場にいる。
―――風間・・千景・・・
山南と藤堂平助が刀を構え向かい合っていた。
かつては仲間同士だったこの2人は
どうしてもここで決着をつけなければならないようだった。
山南が望む羅刹の世界などを作らせるわけにはいかない。
藤堂平助は意を決して山南に切りかかった。
その隙に君菊と風間は千姫の元へ駆け寄った。
千姫は近寄る2つの影に縋りつきたかったが
この苦しみの限界がきたとき、この2人に自分が何をしてしまうか
想像できた。
「来ちゃだめ・・・」
そう言った瞬間だった。
力強い腕に抱き起こされた。
見上げると、あの瞳が見えた。
ずっと前に見たことのある、
心配そうに私を見つめるその瞳。
「しっかりしろ、まがい物の血などに屈するな。」
言葉は低くゆっくりとしゃべるが
腕には力をこめているのがわかる。
藤堂平助は相当の傷を負っていた。
同じ羅刹同士の戦いだが山南の力は違った。
山南は藤堂平助と戦っている間に風間達が千姫の方へ行ったのに
気がついていた。
「さあ、千姫、もう逆らうのはやめなさい。
いつもより多めに与えましたからね。そろそろ限界でしょう。」
山南は嫌な笑みを浮かべた。
雪村千鶴が叫んだ。
「いけない!風間、君菊さん、お千ちゃんから離れて!」
その言葉が響いたと同時だった。
風間の腹部には短刀が深く刺さっていた。
「くっ・・・」
風間は痛みに顔をゆがめた。
自分の腕の中から温もりが無くなったのを感じた。
千姫は風間を刺した刀を容赦なく抜くと
続けて君菊をも刺した。
「姫・・・」
君菊の声はかろうじて千姫に届いたのか
一瞬だが我を取り戻した。
「ああ・・・君菊・・・!私が?!」
「姫、私なら・・・大丈夫・・です・・から・・」
千姫はその横に血溜まりの上で腹部を抑えしゃがみこんでいる風間を見た。
―――そんな、私、何をしてしまったの
千姫は血で染まった手を眺めると唸るように声を上げた。
「うああああああ」
頭を抱え込んで伏せる千姫に風間は体を引きずりながら近寄り
包みこむように抱きしめた。
「気を確かにしろ。おまえは京の鬼姫だ。」
またすぐ我を失うかもしれない状態の千姫だったが
風間はあるだけの力を出し切って抱きしめた。
千姫の頭の中に遠い日の記憶が蘇る。
『あ、着物が汚れちゃうよ。』
『着物なんてどうでもいい。それより血を止めなきゃ。』
――風間・・・
風間の傷は思ったより深かった。
いくら鬼でも傷が塞がるには相当な時間がかかりそうだった。
風間に抱かれている千姫は風間の腹部が生温かい液体でグッショリとしているのを感じた。
それが血だとすぐわかった。
その血が口に触れた。鉄錆のような味が口に広がった。
「風間千景・・・君菊・・・2人共お願い。死なないで。」
君菊がハッとして顔を上げる。
「ひ、姫?」
風間もハッとして腕の中の千姫をみる。
千姫はいつもの千姫に戻っていた。
「どういうことでしょう。」
山南がとうとう藤堂平助を切り伏せると風間達に振り向きそう言った。
「なぜ元に戻る?」
風間が山南に向かい吐き捨てるように言った。
「まがい物ごときに純血の鬼族の血を汚すことなどできん。」
山南が倒したと思っていたはずの藤堂平助が再び構えてたっていることに
気がついたときには刀は振り下ろされていた。
しかし山南も藤堂平助に切りかかっていた。
ただその刃は藤堂の腕に食い込んだまま抜くことができなかった。
「!」
平助の刀は山南の左胸を貫いた―――
最後に山南は藤堂平助と仲間だったころの彼に戻った。
どこで道を間違えたのか・・・
藤堂平助は切なく山南の屍を見下ろした。
狂ってしまった嘗ての仲間をせめて最後に自分の手で元に戻せたことと
変若水というものに振り回される一生の悲しさを思う複雑な気持ちで・・・
ただ藤堂平助が山南と違っていたのは千鶴という愛しき者の存在があったこと。
藤堂平助と雪村千鶴は固く抱き合っていた。
愛は何かを救える不思議な力でももっているのだろうか。
風間はこの現状を見て思った。
愛など、自分とは無縁なものと思っていたこれまでだったが
今自分の腹部を着物の袂で一生懸命押さえている千姫を見て
初めて人を愛しいと思えた。
風間の傷はまだ完全ではなかったが歩けるまでに回復した。
仙台城はじきに主を無くしたことに気付き仙台藩士達が騒ぎだすころだろう。
そうなる前に皆ここを去ることにした。
風間は藤堂平助と千鶴に伝えようとしていたことがあった。
「羅刹には雪村家の故郷の水がいいと聞いた。」
「か、風間、俺達のためにそれを教えてくれたのか?」
藤堂平助は普段の風間からは想像できなかったので
思わず口にでた。
「勘違いするな。羅刹になったお前など奥まった田舎で暮らせということだ。」
「これだもんなー。」
平助は呆れた顔をした。
「羅刹だがみのがしてやるって、素直に言えばいいのに。」
千姫が風間を覗き込み見ながら言った。
「・・・」
千姫はクスっと笑うと、風間の耳元に顔をよせて囁いた。
「いろいろありがとう。」
風間はあまり言われたことがない言葉を言われ
びっくりしたが、
それを悟られないように裾を翻し背を向けた。
そして千姫に言った。
「幕府打倒後におまえを迎えに行くつもりだったが
おまえの体から羅刹の血を抜くまでは俺と一緒にいろ。」
「え?」
突然のことで君菊も千姫も呆気にとられた。
確かにあれだけ羅刹の血を飲まされたのだから
しばらくは発作が起きるだろう。
でもさっきの発作で風間の血を口に含んだとき
即座に元に戻った。
鬼族の純血が効いているのかもしれない。
「わかったわ。」
そう千姫は返事をした。
藤堂平助と千鶴は雪村家の故郷に向かうだろう。
2人の背に君菊と千姫は手を振った。
振り返った藤堂平助が叫んだ。
「風間ー!おまえとはいろいろあったけどよ、
ありがとな!」
そう言って2人も手を振った。
風間はフンっ!と言って少しだけ口角を上げると
「さ、行くか。」
と言った。
3人は千姫の屋敷へ向かった。
Bへ続く
*********************************************
続き書きあがりましたらUPします。
およみいただきありがとうございました^^

にほんブログ村
【関連する記事】