寒いクリスマスの日ですね。
雅恋の二次創作小説、源信×参号のSSができたのでUPします。
雅恋のゲームの源信ルート終了後のお話にしてあります。
文中に縁側という言葉が出てきますが平安時代に縁側ってあったっけ?
と、ちょっと調べ不足で使用してしまっています。ご了承ください。
ではお読みになるかたはこちらからどうぞ→
源信×参号SS
【卯月の庭】
源信さんの学び舎。
今日もたくさんの子供たちと一緒にすごし
私も一緒にいろんなことを学べて
充実感いっぱい。
「気をつけて帰るんですよー。」
最後の一人の子を見送ると、
先ほどまでのにぎやかさがうそのように静かになった。
夕暮れ時の斜めの日差しが学び舎の部屋を照らす。
長い影を作りながら源信さんが片付けをしている。
源信さんの顔も充実感に浸っている表情だった。
そっと近寄り片付けを手伝う。
机上の筆を取ろうと手を伸ばしたら
源信さんも同じことをしようとして手が触れ合った。
「あ・・・」
2人で目を合わせる。
「ふふ。ごめんなさい。」
源信さんは顔を赤くして二コリとする。
「いえいえ。」
2人でニコニコしながら片付けをする。
言葉は無いけれどなんともいえない温かな空気。
この空気が大好き。
「彩雪さん、お茶を入れましょう。それを片付けたら
縁側で待っていてください。」
「はい。ありがとうございます。」
一仕事終えた後の源信さんのお茶がいつも楽しみ。
「これでよし!」
片付けを終えて縁側へ出る。
卯月下旬の若葉が香る風が吹く。
庭の小手毬の花が夕日に照らされ揺れている。
その隣にはやわらかな花びらが幾重にも重なる薄桃色の牡丹。
その下には紫色の東菊がさいている。
源信さんがいつも手入れしているこの庭は
その人柄を表すようにやさしい景色。
「お茶、入りましたよ。」
「ありがとうございます。」
源信さんが私の隣に座る。
そしてスッと私にお茶を渡してくれる。
「彩雪さん、お疲れ様。
子供達、すっかりあなたがお気に入りのようで・・・
疲れたでしょう。」
「疲れますが、心地いい疲れです。
とても充実した気分なんです。
それに。
この源信さんのお茶をいただくと
疲れが癒されて心からホッとします。」
「そうですか。このお茶には特別なものが入っていますから。」
「特別なもの?」
「はい。わたくしから貴女への感謝と想いが入っています。」
にこにこしながらさらりと言う源信さん。
でも私は思わず顔が火照ってしまった。
その表情を見て源信さんは
え?っという顔をして
「私、何か変なこと言ってしまいましたか?」
っと焦る。
「い、いえ・・・そんなことありません。」
顔の火照りが冷めるように手で顔を仰ぎながら
庭の方へ目を向けた。
お茶を飲みながら夕暮れの景色の中で
2人で心地いい沈黙を味わっていた。
ふと、肩に重みを感じた。
源信さん、寝てる・・・
私の肩に頭を乗せている。
疲れているんだな。源信さん。
私はそっと源信さんの頭をゆっくりゆっくりと
自分の膝に持って行った。
いつも源信さんがやってくれる膝枕。
今日は私がやってあげよう。
私もウトウトとして気がついたら外は暗くなりかけていた。
膝で眠る源信さんの顔にかかる髪をそっと
よけてあげようとしたとき、
指が濡れた。
―――源信さん・・・
泣いているの?
源信さんが眉を寄せて肩をびくりとさせる。
悪い夢でも見ているのかもしれない。
涙はますます溢れてくる。
――どうしたの、源信さん。
私は源信さんの顔を両手で包みこんだ。
また源信さんは肩をビクンとさせた。
そしてゆっくりと瞼を開けた。
「源信さん・・・大丈夫ですか?」
源信さんの目は遠くを見ていた。
その目からは涙が止めどなく流れる。
「――夢・・・」
かすれた声で源信さんがポツリと言った。
源信さんの涙を袖で拭ってあげる。
「悪い夢をみていたんですか?」
「ええ。悪い夢でした・・・」
源信さんは私を見上げると
はっと小さく驚いて身を起こした。
「すみません、彩雪さん、
私は寝てしまっていたんですね。」
源信さんは無理に微笑もうとする。
「源信さん。」
私は源信さんの手を握った。
手はとても冷たかった。
源信さんの目を見た。
源信さんはいつものように微笑みかけたけれど
その目が徐々に悲しくなる。
細めている目をそっと開け私を見る。
その瞳は言葉では言い表せることのできないほど
美しい色をしている。
涙でいっぱいの目は心の叫びが聞こえてきそうなほど
何かを訴えかけているように感じた。
「何度も見る・・・・
何度もみるのです。
ずっと前から。
この夢を・・・」
源信さんのこの瞳が持つ不思議な力が
どれだけこの人を苦しめてきたのか。
孤独に耐えた日々。
私の想像を超えた苦しみ、悲しみだったんだろう。
そして今でもその苦しみと闘い続けていたんだ。
たった一人で。
私は源信さんを抱きしめていた。
「大丈夫です。源信さん。
私がいます。
ずっとずっと一緒にいますから。」
「彩雪さん・・・」
源信さんが抱き返してくれる。
「悪い夢を見たときはこうして私がついていてあげますから。」
「さゆ・・・」
私の名前を言いかけたまま、源信さんの声が途切れた。
肩が震えている。
いつもあんなに穏やかで笑顔のこの人が・・・
悪い夢を見るたびに、
この人は暗い夜の中、一人で涙をながしていたんだろうか。
そう思うと胸が苦しい。
しばらくの間、2人は手をつなぎ寄り添い合っていた。
夜の帳がおりても。
「お恥ずかしいところを見せてしまいましたね。」
照れた顔で源信さんが言う。
「恥ずかしことじゃないです。
私は悲しみも苦しみも源信さんと分かち合いたいです。
だから・・・
もう一人で抱え込まないでください。
源信さんが一人で抱え込んでいると私・・・苦しいんです。」
「彩雪さん・・・
あなたという方は・・・」
源信さんが抱きしめてくれる。
源信さんの温もりが体中に伝わる。
私の心の中に熱い思いが溢れてくる。
この人をずっとずっと支えたい。
悪い夢なんてもうも見ないで済むように。
ずっと傍にいたい。
この想いどう伝えたらいい?
「源信さん――。」
私は頭をあげて源信さんの手を両手で包んだ。
源信さんの目を見つめた。
源信さんは少し戸惑ったように目を細めたけれど
「源信さん、私を見てください。」
その瞳はほんとうに美しいけれどどこか怯えたように揺れていた。
言葉に言い表せない感情が溢れてくる。
気がついたら私は源信さんに口づけていた。
それはほんとうに一瞬だった。
触れるか触れないか・・・そんなかんじの口づけ。
源信さんは一瞬の出来事にびっくりしていた。
目が合ったまま私も我に返って顔が火照るのがわかった。
「あ・・・わたし・・・」
ごめんなさい・・と言おうとしたそのとき、
源信さんの顔が近づきやわらかな感触が唇を覆った。
そしてこんなに強く抱きしめられるのは初めてだった。
その力に込められた想いに答えたくて
私も源信さんの背中にまわした腕に想いを込めた。
想いを確かめあうような長い口づけ。
そして惜しむように離れる唇。
もう片時も離れたくなかった。
源信さんの胸に寄り添う。
「彩雪さん。ずっと共に生きていきましょう。」
「はい。」
「源信さん?」
「なんですか?」
「彩雪――でいいです。」
源信さんは少し恥ずかしそうに
「そ、そうですか?
では・・・
彩雪――。」
「はい。ずっとずっと一緒に。
生きていきましょう。」
風に揺れる花々達がやさしく2人を見守ってくれている気がした。
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お読みいただきありがとうございました。
源信さんをこんなに泣かせていいものかなーとちょっと
心配になりました^^;
でも、辛い過去を思うと、こういうことありそうだなと思います。
どうしても参号の方からキスさせる場面をいれたかったので
入れました(*・・*)
源信さんとても奥手そうだし・・・

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