続編をちょっと書いてみました。
清明様と旅に出た後の話になっています。
できれば【夢見の小鳥】を読んでいただいた方が
話分かりやすいと思います。
旅日記みたいなかんじで1話1話短編にしながら
書いていこうと思っています。
ストーリーは清明×参号です。
和泉はすっかり消えてる・・・(‥;)
短編ですが長文かも・・・
それでは本編はこちらからどうぞ。→
清明×参号編
【花夢旅記】1
清明様と旅に出てから7日目になる。
1日目はこんなに歩くものかと先が思いやられたけれど
7日目ともなると慣れてきた。
周りの景色を楽しみながら歩く余裕も出てきた。
私にとっては和泉を忘れるための傷心旅行みたいなものだけど
清明様はお仕事のための旅だった。
主に雨乞いの儀式の依頼が多く
私は儀式の舞いを担当した。
やるごとにこの舞いの意味がわかるようになり
自信をもって舞うことができるようになった。
清明様も
『頭は足りなさそうだが舞いについては褒めてやろう。』
と言ってくれた。
ん、清明様って何か一言多いんだから。
宿は行き当たりばったりで決める。
昨日はある宿主の腕にできた出来物を清明様が見固めの儀で
見事に治したので豪華な食事と部屋に泊まることができた
なんだか清明様との旅は何が起こるか分からなくて
わくわくする。
今日もこれから雨乞いの儀式だ。
村の人々がすでに集まっていた。
村の代表者らしい人が私達に駆け寄った。
「いらっしゃいましたか!陰陽師様。
どうかこの村に、雨を降らせて下さい。
もうひと月もふらないのですわ。」
「ふむ。準備は出来ておるようですな。」
いつも私達が準備するのにここはめずらしく
すでにすぐ舞いができるような状態だった。
「いや、噂を聞きましてね。
かわいい式神様が素晴らしい舞いをしてくれると。
わしら嬉しくて、首を長くしてお待ちしておりました。」
「・・・・・」
清明様は扇で自分の口元を隠しムっとした顔をした。
たった数回雨乞いの儀式をしたけど
そんな噂が流れているなんて・・・
嬉しいようなちょっと違うような・・・
「いやぁ、かわいらしい式神様ですな。
式神様、こいつは私の息子、雅虎でございます。
どうぞお見知りおきを。」
その息子は食い入るような眼で私のことを見る。
年は多分私より全然上でがたいの大きな人だ。
あまりに見られるので、少しいやな気分。
「ふん。」
っと清明様はその人たちに背を向けた。
なんか、雨乞いの儀式に来たのに・・
息子を紹介するために呼んだみたい・・・
失礼でへんな人。
清明様かなり怒ってると思う。
「では。
早速、 雨乞いの儀式 を始めさせてもらう。」
清明様は『雨乞いの儀式』というところを強調して言った。
清明様が舞台に九字を描く。
そして笛を奏で出すと舞いを始めろという合図。
シャン・・・
神楽鈴を振り、舞いを始める。
清明様の笛の音に乗って舞う。
なぜかとても神聖な気持ちになる。
清明様は目を閉じ笛の音に念を込める。
シャン・・・
舞いが終わるころ、ポツリポツリと雨が降り出した。
「おおお・・・」
人々が感声を上げる。
不思議なことにこの儀をやると雨は降る。
先ほどの村の代表者らしい人が駆け寄る。
「いやー、噂通り素晴らしい舞いでした!
それにこのとおり雨が!
ささ、今宵はぜひ、宴を設けましたので
そちらへご案内いたしましょう。」
どうやら今日も宿は大丈夫そう。
村の人々に囲まれながら宴の場所へ向かう。
突然誰かに背中をポンポンとたたかれ振り返った。
あのがたいの大きな村の代表者の息子さんだ。
「あの、式神様、俺の名前は雅虎と申します。」
「あ、私は・・・式神参号と申します。」
「へへ」
・・・この人の視線・・・なんかとても・・・
いやだな・・・。
道中何かしら話しかけられたけどほとんど聞いていなかった。
清明様が前方で人々の間から私をちらちらと心配そうに
見てくれていた。
宴はほとんど村の人たちで盛り上がっていた。
清明様はいろんなひとにお酒を注がれ困っているみたい。
清明様、あまりこういうの好きじゃないみたいだから。
私はお酒が飲めないからひたすら食べていたけど。
おなかいっぱい。
あまりの煩さに少し外の空気を吸いに部屋を出た。
はぁ・・・この宴、いつ終わるんだろう・・・
部屋のにぎやかな音が遠くに聞こえるほどのところまで来た。
人のいない真っ暗な部屋がならんでいる。
ここなら少しホッとできる。
縁側に腰かけた。
―――!
突然視界の端に人影が見えた。
誰かいるの?
そちらに振り向き見据える。
暗くてよく見えない・・・
「清明様?」
しかしその影は何も答えずヨタヨタとふらつきながら
こちらにやってくる。
かろうじて月明かりで見えた顔は、
あの雅虎という男の人だった。
にやにやと嫌な笑みをうかべながら近づいてくる。
私は嫌な予感がして後ろに下がる。
「あ、あの、雅虎さん?
どうしたんですか?」
「式神さん、俺のものにならない?」
―――?
かなり酔っているみたい。
雅虎さんはヨタヨタと転ぶように私に覆いかぶさる。
―――!やっ・・・
お酒の匂い・・・
重い・・・
耳元に酒臭い熱い息がかかる。
逃げようともがく私の両手をすごい力で片手だけで押さえつける。
生温かい湿った舌で首筋を辿る。
たすけて!
あまりの重みに声も出せない。
すごい力で襟を広げられる。
いやだ!やめて・・・清明様・・・たすけて・・・
「へへ、たまんねえな。」
どんなにもがいても、逃げられそうにない・・・
雅虎さんの片方の手が足に触れる。
ああ、もうだめ、清明様。。。
「・・・や・・」
視界がぼやける・・・
「おい!」
!
清明様!
「何をしている!」
清明様が雅虎さんの後ろ襟を猫のように持ちあげ私から引き離した。。
その後は何が起きているかは見なかった。
ただ、ドタドタと音がする。
やっと自由になった私はその場で身を起こし頭を抱えて伏せていた。
体中が震える・・・
バタバタと走っていく音が遠ざかり静かになった。
「参号・・・」
清明様が襟をなおしてくれる。
ブルブルと震えが止まらない。
清明様がそっと戸惑ったように私の肩を抱く。
「お、おまえ・・・大丈夫か・・・」
震えが清明様に伝わってしまう・・
「すまない・・・私がいながら・・・」
怖かった・・・
怖くて怖くて・・・
今ここにいるのは本当に清明様なのか
この目で見ないと、
息もつけない・・・
そっと、頭をあげて清明様を見た。
あの優しい瞳だった。
――清明様だ。
「怖かった・・・」
やっと出た声。
恐る恐る肩にかかっていた清明様の手に力が入り
胸元に抱き寄せられた。
清明様の香り・・・
「もう大丈夫だ。」
温かい・・・
でも震えが止まらない・・・
「なんてことだ・・・
こんな酒の席でお前をひとりにしたのがいけなかった。
すまない。ほんとうに・・・すまなかった。」
清明様が・・・こんな声で・・・
まるで泣いてるかのような・・・。
泣いているのかもしれない。
この人は、本当に私を大事に思ってくれている。
だんだん震えが止まる。
「参号、もう宿へ行こう。」
「はい。」
宴はまだ続いていたようだけれど
私と清明様はその宴に戻ることなく宿へ向かった。
今日も清明様と同じ部屋。
今まで何も考えず過ごしていたけど
今日のあの出来事・・・
男の人ってあんな風になるなんて・・・
怖い・・・
まさか、清明様もあんなふうに・・・
一瞬ゾクっとした。
巻物を読んでいる清明様の後ろ姿をじっと見る。
清明様だって男の人だ。
さっきのことを思い出してしまう。
首筋が・・・ああ、気持ち悪い。
洗い流したい・・・
外にたしか井戸があった。
洗い流したい。気持ち悪い・・・
清明様に気付かれないよう
そおっと部屋を出て井戸へ向かった。
井戸で水を汲み水をすくう。
首筋にかけた。
冷たい。
何回も何回もかけた。
あの場面が浮かんできて
涙が出る・・・
「参号。ここにいたのか。」
振り向くと心配そうな顔をした清明様がいた。
「おまえ・・びしょびしょじゃないか。」
「だって・・・ここが気持ち悪い・・・」
私は首筋を押さえて立ち上がった。
清明様が一歩前へくると
私は一歩下がる。
「参号?」
部屋に向かって走った。
清明様でさえ、今は怖い。
部屋の隅に膝を抱えて座った。
この世に一人ぼっちになったような気分になった。
清明様が部屋に入ってくる。
目が合う。
「おい、着替えないと風邪をひくぞ。」
「怖いんです!怖い。清明様も・・・」
「ほう。」
清明様は意外にも不思議そうな顔をした。
「それは私をやっと男と意識してくれたということか?」
――?
清明様が近づいてくる。
「こ、来ないでください!」
清明様は少し怖い顔になる。
来る・・・
私は頭を抱えてうつむいた。
清明様がまたギュっと私を抱きしめた。
両手で押し返そうと必死でもがいた。
「離してください!」
「いいや、離さない!」
清明様は強い口調で言う。
清明様の抱きしめる力は強い。
けれどなぜだろう、やっぱり・・・やさしさを感じる。
「参号、男が怖いか?
私も男だ。
だが、私はあんな男のようなことはしない。」
もがくのをやめた・・・
清明様が言うことをちゃんと聞きたかった。
「だからといって、いつまでもおまえを
腫れものを扱うように子供扱いするつもりは無い。」
「・・・・」
「私は、
おまえをひとりの女として見ている。」
清明様・・・
清明様の鼓動が響いてくる。
速い。
「参号、私は――
おまえが――好きだ――」
ドキリと胸が高鳴った。
体の強張りが解けていく。
心のどこかで、待っていたかもしれない。
そう言ってくれることを。
いつもいつも見守ってくれていた。
寂しい時、辛い時、
涙を拭ってくれた。
この温かくて優しい腕でそっと抱きしめてくれた。
怖くなんかない。
この人は心から私を想ってくれている。
信じていい。
この人を。
「清明様。」
「ん?」
「清明様!」
「な、なんだ。」
「もう少しこのままでいたいです・・・」
そう言うと、清明様は何も言わず
またやさしくギュッと抱きしめてくれた。
2人共着ていたものが濡れてしまったので着替えた。
ああ言った後、今度は清明様が照れてしまっているよう・・・
「明日も早い。寝るぞ。」
「はい。」
いつものようにそれぞれ寝床に入る。
灯りがゆらゆら揺れている。
「私がいるから安心しろ。」
私が不安になる前にそう言ってくれる。
「はい。」
寝床は少し離れているけれど
清明様が手を差し伸べた。
「手、かせ。」
清明様の目を見つめながら手を差し出す。
その手を大きな手がやさしく包む。
「こうしていればいい。」
「はい。」
清明様のこの瞳が好き。
大丈夫。この人と一緒なら。
今日の長い1日が終わった。
【花夢旅記】1完
【花夢旅記】2へ
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お読みいただきありがとうございました。
清明様やっと告った・・・
言わなきゃどうにもならない状況にしてしまった(・ω・)
今回はドSぶりがあまりないかな?

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